緩和ケア専門医に聞く。今、なぜ「早期の緩和ケア」が求められるのか?

「緩和ケアは最期の医療」という考えは、もはや過去のものになりつつあります。
今回は、福岡市内の緩和ケア専門医にインタビューし、今なぜ“早期の緩和ケア”が大切とされるのか、その理由と現場の実情を伺いました。

—— 緩和ケアは「終末期」に受けるものというイメージが根強いですが?

「確かに以前はそうでした。でも最近は、診断の時点から緩和ケアを導入することで、患者さんの苦痛を早くから軽減し、より良い生活が送れることが分かってきています。」

—— 実際、福岡ではどのような形で行われているのでしょうか?

「たとえば九州がんセンターや福岡大学病院では、外来の段階から緩和ケアチームが患者さんに関わることが増えています。がんの治療中でも、吐き気や不眠、不安などを和らげることは非常に重要なんです。」

—— 緩和ケアは、患者さんの“生きる意欲”にも影響するのでしょうか?

「ありますね。痛みや息苦しさが取れると、食事を楽しめるようになったり、家族との時間を大事にできるようになります。“治すこと”だけではなく、“その人らしく生きる”ことを支えるのが緩和ケアです。」

—— 家族にとっても、支えになりますか?

「もちろんです。患者さんの精神的・身体的負担が軽くなると、家族も少し安心できますし、介護の負担も減ります。場合によっては、グリーフケアや遺族ケアも行っています。」

このように、緩和ケアは治療の後半だけでなく、「最初からの併走者」として、患者さんと家族を支える存在です。
福岡にはそうした体制を整えている医療機関が増えつつあり、これからの地域医療において欠かせない要素になっています。

次回は、「患者さん自身が語る緩和ケアの体験談」を予定しています。

緩和ケアにはいくらかかる?福岡で使える制度と費用の実際

緩和ケアを受けたいと思っても、気になるのが「費用」のこと。
病院に入るのか、自宅で受けるのか、保険が使えるのか。今回は、福岡で緩和ケアを検討している方に向けて、実際にかかるお金と使える制度をわかりやすくまとめます。

まず、緩和ケアは医療保険の対象です。がん患者の方が緩和ケア病棟(ホスピス)に入院した場合、特別な入院料がかかりますが、健康保険で自己負担は基本的に3割(高額療養費制度あり)です。さらに、70歳以上の方であれば1割または2割の負担で済むケースも多く、実際には月数万円程度で済む方もいます。

福岡市内にある緩和ケア病棟のある病院(九州がんセンター、久留米大学病院など)では、がん拠点病院として相談員が制度説明を行ってくれます。

一方、在宅緩和ケアの場合、訪問診療や訪問看護の費用が発生しますが、こちらも医療保険・介護保険の併用が可能です。福岡市では24時間対応の訪問診療を行うクリニックが複数あり、夜間対応などの加算もありますが、月に2〜4万円ほどが目安です(自己負担1〜3割の場合)。

また、福岡県では「福岡県がん患者医療費助成制度」など、所得や病状に応じて医療費助成が受けられる場合もあります。加えて、介護保険の要介護認定を受けると、訪問看護・福祉用具・居宅介護支援などが制度内で利用できます。

家族の負担を減らすために、福祉タクシーやレスパイト入院(一時的な入院)なども選択肢として検討できます。

結論として、緩和ケアは「高額な特別医療」ではなく、制度を上手に活用すれば、経済的な負担を大きく減らすことができます。まずは主治医や相談支援室、地域包括支援センターに相談し、自分に合った選択肢を探すことが第一歩です。

がん以外でも使える?福岡で進む緩和ケアの広がり

「緩和ケアって、がん患者のためのものですよね?」
実はそうではありません。緩和ケアはがんに限らず、心不全、慢性呼吸器疾患(COPD)、ALS、認知症など、さまざまな病気と共に生きる人を支える医療でもあります。

たとえば、心不全を繰り返す高齢者が「息苦しくて外出できない」「不安で夜も眠れない」といった症状に悩まされる場合、緩和ケアは有効です。福岡の医療機関でも、非がん患者への緩和ケアが徐々に浸透しており、訪問診療やチーム医療の体制が整ってきています。

実際に、福岡市立こども病院では、神経疾患などを持つ子どもへの緩和ケアを行っており、家族のケアにも力を入れています。久留米大学病院では、ALS患者へのチームアプローチが行われ、在宅での生活を支える仕組みが強化されています。さらに北九州市では、認知症高齢者に対しても在宅医療と緩和ケアが連携し、症状の緩和と家族支援が進んでいます。

非がん疾患でも、痛み・不安・生活上の困難は少なくありません。むしろ、進行が緩やかなぶん、長期間にわたって支援が必要になることもあります。そうしたときこそ、緩和ケアの力が発揮されます。

「がんじゃないから相談できない」と思わずに、まずはかかりつけ医や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。福岡県では、がん相談支援センターも非がんのケースに対応しており、制度や医療機関の紹介を行っています。

緩和ケアの本質は、「病気の種類」ではなく「人のつらさをどう和らげるか」。
福岡でも、そうした視点からの取り組みが着実に広がっています。今後も、このブログを通じて、非がん領域の緩和ケアについても丁寧に伝えていきたいと思います。

ホスピスと緩和ケアの違いとは?福岡の現場から考える

「緩和ケアとホスピスって何が違うの?」
そう尋ねられることが、私はこれまでに何度もありました。確かに、似たような印象を持たれがちですが、両者は目的やタイミング、制度上の違いがあります。

まず「緩和ケア」は、がんや慢性疾患を持つ方に対して、病気の早期から行われる“苦痛の軽減”を目的とした医療・ケアです。痛みや不安の緩和だけでなく、生活の質(QOL)を保つことを重視しており、治療と並行して提供されることも少なくありません。福岡の多くの総合病院では、がん治療の初期段階から緩和ケアチームが関わるケースが増えています。

一方、「ホスピス」は、人生の終末期において“穏やかにその人らしい時間を過ごす”ことを支援する医療です。余命6ヶ月前後とされる末期状態の患者さんに対して提供されることが多く、入院型のホスピス病棟や在宅ホスピスという形で運用されています。福岡市内や久留米市には、聖マリア病院や久留米大学病院など、緩和ケア病棟(ホスピス)を有する医療機関もあります。

また、最近では在宅ホスピスも広がりを見せています。福岡市や糸島市では、自宅で家族とともに最期を迎えるための医療チームが訪問診療・看護・ケアマネジメントを行う体制が整ってきています。

それでは、どちらを選ぶべきか——
それは「治療を続けながら日常生活を大切にしたいのか」「余命が限られる中で穏やかな時間を重視したいのか」といったご本人・ご家族の希望によります。

いずれも、「その人らしく生きること」を支えるという点では共通しています。
福岡には選択肢があります。大切なのは、早めに相談し、必要な支援を受けること。次回は、がん以外の病気における緩和ケアの活用についてご紹介します。