緩和ケアにおいて、患者さん本人だけでなく、家族の存在はとても大きな意味を持ちます。私も福岡で家族を在宅で見送る経験を通して、家族がどう関わるかによって、本人の安心感や生活の質が大きく変わることを実感しました。
しかし、家族といっても、医療の専門家ではありません。できること・できないことがあり、すべてを背負い込むと精神的にも肉体的にも疲弊してしまいます。今回は、緩和ケアにおける「家族の役割」と「心構え」について、福岡での体験をもとにお話ししたいと思います。
- 「何かしてあげなければ」より「一緒にいる時間を大切に」
緩和ケアでは、痛みや症状のコントロールは医療者に任せてよい部分です。家族に求められるのは、むしろ「そばにいてくれること」「安心できる空気を作ること」です。
例えば、特別なことをしなくても、好きな音楽を流して一緒に過ごしたり、昔の思い出話をしたりするだけで、患者さんの表情が和らぐ瞬間があります。 - 「助けを求めること」も家族の大切な役割
福岡では、在宅緩和ケアのサポート体制が整ってきており、訪問診療・訪問看護・介護支援専門員(ケアマネジャー)など、地域で支える仕組みがあります。
困ったとき、無理をせず「助けてください」と言えることも、立派な役割のひとつです。
例えば、福岡市内では「在宅医療・介護連携支援センター」や「地域包括支援センター」などが、家族の相談窓口にもなってくれます。夜間の緊急時にも対応してくれる訪問医や看護師がいるクリニックも多く、孤独を感じずに過ごせる環境があります。
- 「心が揺れる」ことを責めない
看病を続けていると、「もっとこうしてあげればよかった」「怒ってしまった自分を後悔している」と、自分を責めることがあります。でも、それは人として当然の感情です。
緩和ケアは「完璧にこなすこと」ではなく、「その人らしさを支えること」が目的です。感情を抑え込まず、信頼できる人に話すことも、心のケアの一環です。
福岡の中には、家族向けのグリーフケア(喪失後の支援)を行っている施設もあります。たとえば、久留米や北九州では、病院の中でグリーフカウンセリングを実施するところもあります。
- 家族のケアも大切に
緩和ケアに関わる家族自身も、ケアされるべき対象です。疲れたら休む、感情が辛いときは話をする。福岡の在宅医療の現場では、「家族支援」も含めたチームケアが当たり前になってきています。
終わりに
緩和ケアは、患者だけのものではありません。家族がどのように関わるか、無理せず向き合えるかは、最期の時間をどれだけ穏やかに過ごせるかに直結します。
福岡という地域には、支え合う仕組みが少しずつ広がっています。孤立せずに、地域とつながりながら「その人らしさ」を支えること。
それが、緩和ケアの本質だと、私は思います。